1979年8月、38年前の夏休みに盲腸になる。(完結編)

まず最初にお詫びを。<(_ _)>

盲腸になったとき、ぼくは青山寮に住んでいたと思ったが、最後の電話の話を思い出すと、38年前の夏休みはすでに下落合で一人暮らしを始めた後だったことに気づいた。ただし、3月まで南青山寮に住んでいたので、夏休みは寮にもちょくちょく泊まりに行っていた。そこで、記憶がごっちゃになっていました。申し訳ありません。
実際は、配送センターが港区だったので青山寮から近く、夏休みで寮にも空き部屋があったので、バイト中は内緒で寮に泊まって、そこから通っていたのです(笑)。 
で、退院してから下落合の下宿に戻ったのでした。
それにさっき気づいた(笑)ので、前の文章も加筆修正しました。<(_ _)>

手術が終わりベッドに寝たままのぼくに、医者が「ほら、これが君の盲腸だよ」と切り取った後の生々しい内臓部分を見せてくれた。
まさか、そんなものを生で見せてくれることなど想像してなかったので、目を凝らして覗きこんだ。滲んだピンク色なのだが、とても気味の悪い臓器(?)だと思った。

その後、ぼくは手術台の上部分のマットと戸板のようなものに乗せられたまま、二階へ担ぎ上げられた。
今でも不思議だが、当時はそういうのが一般的だったのだろうか? ぼくが横たわったままの戸板(?)の隅を4人が抱え、階段を登り、二階へ持ちあげられたのである。

こんな経験した人、他にいるのだろうか?
小さい病院で、手術室が1階にあり、入院するベッドが2階の場合は、必ずこうだったのだろうか?

仰向けになっていたぼくは、時折斜めになったりするので不安になり横を見た。遥か下に1階のロビーが見えた。ここで転がったら、ぼくは1階に落っこちて叩きつけられ死ぬんじゃないか? とさえ思ったのだ。

心配は杞憂に終わり、何とか無事に2階まで上がり、事なきを得た。

夜中になると痛みが激しくなり、それは時間とともに増していった。耐えられなくなったぼくは、ナースコールボタンを押した。
先ほどの綺麗な看護師さんがやって来た。
「痛みがひどいんですけど」
「まあ、仕方ないですね。我慢してください」
看護師さんは、ぼくの痛みなど他人事のように言い放ち、すぐに戻って行った。

入院期間は一週間ほどだったろうか。
最初の頃は、夜中にトイレに行くだけでも激痛が走り大変だった。
三日目くらいにサークルの連中が見舞いに来てくれた。盲腸になると、笑うと痛いことを知っていた先輩が、わざと「ギャグ漫画」の単行本を持ってきた。

ちょっとだけ読んだら見事に笑える話で激痛が走ったため、それからは読むのを止めた。

綺麗な看護師さんと仲良くなり、色々な話をした。
退院して下宿に帰ってから、その看護師さんのことを思い出したぼくは手紙を書いた。
簡単に言えば、こんな内容である。

色々とお世話になり、ありがとうございました。お陰様で無事です。今度渋谷あたりでお酒でも飲みませんか。よかったらお電話ください。

当時、2階に住んでいたぼくの下宿には当然の如く部屋に電話などない。
1階に共有の電話があり、その呼び出し音がなると、近くの部屋で司法試験の勉強をしていた大学院生(?)が電話を取って2階の住人も呼びに来るというスタイルである。

彼は大家さんから月にいくらかもらっていたか、下宿代を少し安くしてもらっていたんだろう。ボランティアでそんなことをやる酔狂な人間がいるわけはないので。

ぼくはその手紙を書いた後、電話かかって来ないかなあ、と首を長くして待っていた。夏休みとは言っても、昼はサークルの部室で一人で歌を唄っていた(笑)ので、夕方、下宿に帰ってからであるが。

さて、電話はかかって来たか?

これが見事にかかって来たんですね。(*^^*)

夜、テレビを見ていると階段を駆け足で登って来る音がする。
ぼくの部屋のドアがノックされた。
「〇〇さん、電話です」
彼の呼びかけに「はあい」と返事をして、1階に降りて行った。

でも、この時点では誰からの電話か確かではない。ただし、ぼく宛に電話がかかって来るのは、仙台の実家の両親からたまにあるくらいなので(ひょっとして!!と)期待した。

受話器を手に取り「もしもし」と言うと女性の声が。
「Kです。手紙ありがとうございました」
※ちなみに、その美しい看護師さんの苗字はKである。
「ああ、はい」
「まさか手紙なんてもらうと思わなかったのでびっくりしました。〇〇さんからお誘いの手紙が来たと言ったら、周りから冷やかされました。お酒、大丈夫です」
彼女の発した言葉に、あまりの嬉しさで声も手も少し震えた。

とまあ、そんなわけでぼくは38年前の夏休みに───。
毛を剃ってくれて、なおかつ自分の大事なものを見た、美しい看護師さんとデートをすることになったのである(笑)。

この後も彼女と色々な面白い話がある(高田馬場の呑み屋で、ぼやを起こしかけた話とか)のだが、ここまでにしておきます。

それはまたの機会に。
とりあえず、盲腸編はこれにて完結です。
お粗末様でした。<(_ _)>

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ここはぼくが住んでいた下落合の下宿に向かう途中の坂道。ビルの隙間から真正面遠くに見えるのは新宿の高層ビル群。夜になると夜景が綺麗なので、時折、こんな感じで後ろ向きに歩いて上ってました(笑)。

イメージ 2
2階建てのぼろいアパートは取り壊され、今ではこんなマンションになっていた。(2014年秋に撮影)