38年前の夏休み、盲腸になる。(退院後)

続きを書け!! という要望が多いので、当り障りのない話だけとりあえず書いておきます。(※R12指定です)

さて、ぼくの盲腸手術に立ち会った美しい看護師さんとの初めてのデートは渋谷の道玄坂近くの結構大きなパブ(これは今や死語ですかね?)だった。
その時はお互いの簡単な自己紹介や彼女の仕事の話、ぼくの大学のサークル仲間の笑えるエピソードとか、そんな話に終始した。
彼女はさっぱりとした明るい性格で、飲んで話をしても楽しかった。
病院で見た毅然とした雰囲気ではなく、普通の可愛らしい女性だった。

3時間程度だったかな、その時は。
次はぼくのホームグラウンドとも言うべき高田馬場で飲みましょうということになり、別れを告げた。

最初のデートから2週間後ぐらいだったろうか。
高田馬場駅の東口ロータリーから神田川方面に向かい歩いて1分。
サークルの仲間たちとしばしば訪れる2階にある居酒屋が2度目のデートの場所になった。
※店の名前がどうしても思い出せないが───。
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この写真の右側の奥にその居酒屋があった。

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そこは畳敷きの和風の店だった。
店内は広く、大きなテーブルが多数ある。
ぼくたちは長いテーブルの端っこに二人向かい合って座布団に座った。

8時頃に予約して呑み始めたと記憶している。
焼き鳥がメインで、他も和食系のつまみが殆ど。酒はビール、日本酒、ウイスキー、何でもござれである。ただ、当時はまだ焼酎が人気になる前だったはずなので、焼酎を飲んだ記憶はない。


彼女は結構酒が強かった。そして、むろん当時のぼくも。
日本酒をがんがん頼んだ気がする。
学生時代、ぼくは煙草を吸っていた。主にハイライトだったと思うが、それからマイルドセブンに変えたのだったか。

灰皿はテーブルの端にあった。
その灰皿に吸い終えた煙草をおいては、すぐに新しい煙草を口にくわえていた。

泥酔状態になりながらも、話は弾んだ。
11時近くになった頃だと思う。
ふっ、と匂いを嗅ぐと、何やら焦げ臭い。
でも、構わずに彼女との楽しい話をつづけた。
(何たって、酔っぱらいだからね)

しかしながら、その何かが焦げているような匂いは一層強くなった。
その時である。
「おい、そこ燃えてるぞ!!」と一つ離れたテーブルにいた隣の客が叫んだ。

よく見ると、私の左側に灰皿が落ちて、完全に消えてなかった煙草の火が座布団に燃え移り、微かながら炎が上がっていた。
「うわ!!」
と私も叫んだ。ちなみに彼女は気付かなかったみたいである。つまり、彼女も相当酔っていた。

すぐに店の従業員が来て、灰皿を取り除き、濡れタオルみたいなもので座布団を叩いた(と思う)。
※酔っぱらいだから、おぼろげな記憶だけどね。

まあ、無事に火は消し止められ、ボヤとは言えないほどのボヤで済んだ(笑)。

お店の人に「すみません」とぼくは言った。
「気を付けてください。怪我はないですか?」
と言われたと思う。

普通の人ならそこで帰るだろう。
ただし、ぼくはまだ帰りたくなかった。

何と言ってもぼくの下宿は下落合(正確には中落合1丁目12-1)である。
この店から歩いても30分程度。
終電がなくなったら彼女はどうするのだろう?

というわけで、ぼくらは何事もなかったようにその後も飲み続けた。零時を過ぎ終電はなくなった。彼女も「電車がないので帰ります」などという野暮なことは言わなかった。
ここまでくれば、暗黙の了解というやつである。

「ウチくる?」(中山ヒデか、俺は)
「うん」

泥酔したぼくらは、千鳥足で神田川を渡りぼくの下宿へ向かった。
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とまあ、ここまでで終わりにしておきます。
その後は皆様のご想像にお任せします。

結局、盲腸になったおかげで、ぼくは美しい看護師さんと出逢い、お付き合いするようになったのである。

38年前の夏の、最初は甘酸っぱい、でもその後(この数か月後の恐ろしくて書けない部分(笑))は苦い思い出話でした───。