師走の東京、40年振りの再会。

 新幹線の窓の外を流れる景色は、過去を置き去りにしていくのか、まだ知らぬ未来に向かっていくのか、どちらなのだろう。
 別れか、出会いか。
 私は、東北新幹線「やまびこ」に乗り、冬晴れの青空を見上げながら、東京に向かっていた。
 約四十年ぶりに再会する中学校時代の同級生の女性。
 中学の時は同じクラスになったことはないのだから同期生というべきか。ならば小学校時代の同級生。彼女と会うために朝八時に仙台の自宅を出た。

 十二月一日。師走の始まりという冬の日にしてはかなり暖かい。気象予報士の台詞によれば、十一月上旬並みの気温だそうだ。羽織ってきたカシミアのコートも、東京に着けば厄介な邪魔者になってしまうだろう。
 福島、郡山、宇都宮とどんどん東京に近づいていく。
 大学に合格し、あこがれの大都会での生活に夢を抱き、東京に向かっていたあのときの列車の中でも、こんな気持ちで窓の外の景色を眺めていただろうか。
 時間が経つにつれて陽も高くなり、立ち並ぶビルの合間から太陽が頻繁に顔を覗かせる。
「次の停車駅は大宮」というアナウンスが流れた。
 ここまで来れば、もはや首都圏。東京に着いたも同然だ。私は降りる支度を始めた。

 当初予定していた東京駅ではなく、ひとつ前の上野駅で私は新幹線を降りた。そう言えばあの当時はまだ東北新幹線は開通しておらず、在来線の特急列車で終点は上野駅だった。乗車時間も四時間以上かかり、現在の倍くらいの長い間、列車に乗っていた。

 列車から降り立った東京は予想通りさらに暖かかった。仙台とは体感気温が優に五度以上は違う。コートを羽織る必要もなかったが、手に抱えるのも面倒だった。
 上野駅で地下鉄銀座線に乗り換え、早稲田に向かった。そこには私のソウルフードとも言うべきラーメン屋がある。
 昼食時間より少し早かったこともあり、すんなりと店に入ることができた。三十年以上経っても、学生時代と変わらないその味に満足しながら、スープの最後の一滴まで飲み干し、店を出た。次は神宮外苑だ。
 ラグビーシーズンになると黄金色に輝く銀杏並木も、今年は暖かかったせいか、まだ緑色を残していた。辺りにはその風景をカメラに収めようとする人たちがたくさんいて、私も何枚か撮影した。次にこの銀杏並木を見られる保証などどこにもないのだから───。

 次の目的地は六本木。午後五時から点灯されるという六本木ヒルズや“けやき坂”周辺のクリスマスイルミネーションが見たかったので、彼女との待ち合わせ場所をその傍の喫茶店にしてもらった。約束は三時だったが一時間以上も早く着いた。老舗の羊羹屋が営むその店は、想像していたより洒落た内装だった。店内の客は、ヒルズ族の奥様方と思われる女性が多く、傍目で見ても高価そうな服で身を包んでいた。
私は鞄からノートPCを取り出し、文章を打ち込み始めた。

 約束の五分ほど前に彼女が現れた。写真を見ていたので、すぐに分かった。四十年振りとは言いながらも、FBで何度も会話を交わしていたので、時の隔たりを感じることもなく、すぐに打ち解けた。私が持っていった小学校と中学校の「卒業アルバム」の写真のコピーを見ながら、昔話に花が咲いた。彼女は私と同じようにラグビーの大ファンでもあり、その話も尽きず、時間は風のように流れた。

 あっという間に点灯時間の五時に近づき、私たちは店を出た。早めに店に到着した私は、イルミネーションが最も綺麗に見えるポイントはどこかを店員に訊いていたので、二人でその場所へ向かった。さすがにそこが絶好の撮影ポイントであることを知っている人たちもいたようで、すでに多くの人たちが集まっていた。

 午後五時。一斉に“けやき坂通り”のイルミネーションが点灯した。周りからどよめきとも歓声ともつかない唸り声があがる。
 幻想的なほどの美しさだった。
 最初に青色LEDのイルミネーション。それが五分後には赤に変わる。
 私は何度も何度もカメラのシャッターを押した。
 この美しい光景も次に見られる保証などないのだから───。

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 そこでたくさんの写真を撮った後、私たちは場所を移動した。
 庭園内のイルミネーションや、ヒルズに建てられた、赤、青、紫、緑、黄色などと数分おきに光の色が変わるクリスマスツリーも美しかった。

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  もっとその場で感動的な光景に酔いしれていたかったが、そうもいかない。私には次の目的地があったからだ。途中まで、彼女も一緒だった。下北沢駅で私は電車を降り、彼女と別れた。再会を誓って。
 私は足早に最終目的地に向かった───。

ということで(笑)、台原中学校昭和48年三年六組卒業の旧姓C様。
昔話、ラグビー談義など楽しい時間、及び私の時間つぶしにお付き合いいただきありがとうございました。またお会いするのを楽しみにしております。<(_ _)>