『ノッティングヒルの恋人』


台原中学校とは関係ないですが、秋の夜長に、たまには映画のレビューでも。
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悩んで、苦しくて、眠れない夜に──
生きることがつらくなった夜に──
ふと、人恋しくなった夜にも──

ほんの10分だけでいい。時間をください。
この映画のラストシーン。
「Indefinitely」と答えるジュリア・ロバーツの優しい笑顔を見れば
幸せな気持ちで眠りにつけるはずだから。

ものすごい美人というわけでもない。
素晴らしいスタイルをしているわけでもない。
ほとばしるような妖艶さを持っているわけでもない。
でも、何故か魅力的なジュリア・ロバーツ

この映画は、ロンドンでごく普通の書店を営む男性とハリウッド女優の恋物語
世界を股に駆ける人気女優アナ・スコットをジュリア・ロバーツが演じ、
ノッティングヒルという街で書店を営むウイリアム・タッカーを演じるのは、
あのたれ目の度合いを欽ちゃんと勝負させたいヒュー・グラント

タッカーの経営する書店に、サングラスをかけた女性が本を買いに立ち寄る。
サングラスを外すと、その女性は誰もが知っている人気女優アナ・スコット。
自身もファンだったのだろう、思わず目を見張るタッカー。
レジでの何気ない会話、それだけで胸がときめく。

最初の出会いはその会話で一度幕を閉じるが、
外へ出たタッカーが道角で女性にぶつかり、
持っていたオレンジジュースをこぼし、女性の服はびしょ濡れに。
女性を見ると、その女性は先ほどまで店にいたアナだった。
困ったタッカーはアナを着替えさせるために、自宅に誘う。
普通はそんなこと有り得ないだろうが、
アナは気軽にタッカーの家に行き、服を借り着替える。

その帰り際、何を感じたのか、タッカーを見つめたアナは突然彼に熱いキスを。
タッカーにとってはまるで夢のような瞬間。
だって天下のハリウッド女優。
世界中に名を知られている魅力的な女性から突然キスなどされてみなさい。
私ならその場で卒倒する。

話は個人的なことに飛びますが、私、松たか子さんのファンなのです。
初めて見たのはロンバケで、山口智子さんの素晴らしさだけが際立って、
松さんは「松たか子? 垢抜けなくて大したことないや」と思っていたのですが、
翌年再びキムタクと共演した「ラブジェネ」では、
驚くほど素敵な娘になっていました。
もうそれからは、テレビはもちろん、彼女の芝居も見に行くようになりました。

ここでひとつ、すごい話を。
実は私、松たか子さんに太股を触られたことがあります。
彼女は覚えていないでしょうが。

夏のある暑い日(まあだいたい夏は暑いですが)のことです。
椅子に座っていた私の左隣に、突然松たか子さんが来ました。
何をするかと思いきや、
「ごめんなさい」と言って私の太股に右手を置くじゃありませんか。
いやあ、びっくりした。というか興奮しました。

私の太股に彼女の生の手があるのですよ。彼女の手のぬくもりが伝わってきました。
太股に生手ですよ、太股に生手。「蹴りたい背中」じゃないですよ(関係ないか)。
「この子、俺に気があるのか」
しかし、私が言葉を返す間もなく、彼女の手は私の太股をすべるようになぞると、
組んでいた私の脚を払いのけ、目の前を左から右に忍者のように走っていきました。
まあ、言ってしまえば、ただ単にそこを通るのに私の足が邪魔だっただけのこと。

つまり、芝居を見ていた最中の出来事なのです。
松さんが、舞台下手から降りて消えて、観客席の中央あたりまで行き、
再び上手側から戻って来るというシーンなわけです。
舞台に戻るのに、中央通路側の最前列に座っていた私が脚を組んでいたので、
その脚が邪魔だったということです。
でもね、さすがに好きな女優に突然「ごめんなさい」と声を掛けられ、
太股に手を置かれたらびっくりします。

数十年前、キャンディーズデビュー時、仙台中央通りの喫茶店でのミニライブで、
高校生のガキだった私が三人の生手に触れたとき以来の衝撃でした。
憧れの女性に触れるなんて、せいぜいそんなことぐらいしかありません。
なのに、この映画では──
ということで「ノッティングヒルの恋人」に戻るわけです。

その後、二人は互いに好意を持ちながら、いつもボタンの掛け違いで恋は進まない。
気性の激しい、気まぐれなアナに翻弄され、戸惑うタッカー。

ジュリア・ロバーツのすごいところは、やはりその表情。
笑い、怒り、哀しみ、戸惑い。万華鏡のようにその場面場面で顔が変わる。
意を決し、天下のハリウッド女優が冴えない書店経営者に告白するシーン。

「自分も一人の普通の女なの……」
と話すときの可愛らしさは、まるで少女のよう。
(「普通の女の子に戻りたい!!」キャンディーズじゃないって……)
彼女の、感情によって変わる表情を見ているだけで飽きない映画。

ラストシーン。
記者になりすまして、告白の意味を確かめるために彼女に質問するタッカー。
彼の出現に驚くアナは、自分の本当の気持ちをもう一度打ち明けるために、
記者に再び同じ質問をさせ、そこで「Indefinitely(永遠に)」と答えるのです。
流れる音楽。弾けるような笑顔のアナ、いやジュリア・ロバーツ
満足げな笑みを浮かべるタッカー、いやヒュー・グラント

この後も、さらに先へとシーンが続くのですが、映画的にはここがクライマックス。
このときの彼女の笑顔が、もう、もう、もう最高に魅力的です。
DVDを借りた日から返却する一週間後まで、
毎日この場面を見てから眠りについていました。

普通の男が夢に描くような話が現実に。
いやあ、いいですね。うらやましいですね。
こんなことが現実にあったらいいなあ、と。

ローマの休日のように、
接点など持ちうるはずのない憧れの女性との奇跡のような恋物語
女性が見て面白い映画かどうか分からないけれど、
男性なら憧れるストーリーでしょう。
表情だけで様々な感情を表現する凄さを堪能できる作品だと思います。
            
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